第10章 使命感
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「ん、おいしい。」
りんはそう言うと口に手を当てて微笑んだ。
頼んだのはファミリーレストランが提供する宅配サービスの、なんてことないおろしハンバーグだ。
一方、杏寿郎はありとあらゆる商品を注文し、結果、三台の宅配バイクを出動させるという小さな事件を起こした。
杏「ファミリーレストランにはあまり行ったことがないので新鮮だ!これはこれで旨いな!」
「私は…、」
『小学生の頃たまに連れて行ってもらいました。』と言いそうになって口をつぐんだ。
両親がりんを放任する前の事を楽しい思い出として話すのは、何となく惨めに思えたのだ。
「…私も新鮮です。」
りんがそう言うと、嘘の声音を感じ取った杏寿郎が食べるのを止める。
そしてりんの事をじっと見つめた。