第2章 仕込み【幸村】
その後はふわふわした気持ちのまま家に送り届けられ
あまり記憶がないまま時間が過ぎた。
それから何日もそういう関係が続いた。
最初こそ無理やりだったもののどうやら私は完全に精市にハマってしまったらしい。
もう精市との関係がないなんて考えられないほどに。
私達がどういう関係なのか疑問に思う時がある。
付き合おうとか言葉にしてはないけど行為中には「好き」と言ってしまってるし、精市だって『俺もだよ』と言ってくれている。
確信はあったけど確かめたくて
「私達付き合ってるんだよね?」
『…え。そんなつもりはないよ』
「…??ち、違うの?」
『テニスをしてる間はそういう面倒臭い関係は持ちたくないんだ。嫌ならもう、来なくてもいいよ?』
「……」
「そんなの。酷いよ。好きって言ってたのに?」
涙が出た。
『あーそうだね。落ち着いて。好きって言ってたのは本気だよ。でも今はテニスが俺の中で1番だから付き合うとかはできない。それが辛いなら今日で会うのは終わりにしよう。』
「やだ!嫌だ!!もうそんな事言わないで。付き合ってくれなんて言わないから!!
……離れないで。」
『フフッ。ありがとう。同じ気持ちでいてくれるなら嬉しいよ。』
『俺のテニスが世界でも通用するようになればその時は俺と正式に付き合ってくれないか?』
返事の代わりに泣きながら頷き、抱き合った。
その時の精市は悪い顔で笑っていたのに私は気づかないフリをした。
正確な判断ができなくなるほど私は精市にハマっている。
初めて家に行った時から私はずっと都合の良い女でしかない。
わかってるけど認めたくなくて自分に嘘をつく。
その日から会って行為に及ぶ度に色んな感情でぐしゃぐしゃになりそうになるけど、今更離れられなくて。
きっとあの日言っていた未来の話しも嘘なんだろう。
でもまだ何処かでその嘘を信じてる自分がいる。
心がコナゴナになりそうな時もあるけど1人にされるよりはマシ。
ずっと貴方の傍にいさせて。
end