第3章 鬼灯との出会い
少し過去の話をすると、確かに鬼灯の言う通り。この二人が婚約したのは実にラッキーな事だった。
椿は生前、ある貴族の一人娘であった。その屋敷には多くの椿が咲いていた事から、別名'椿姫'とも呼ばれていた。
彼女も成人となった頃、ある貴族の男と婚礼の約束を果たした。だが、間もなく婚姻を結ぶという時に、相手の男は病に臥してしまったのだ。
その男の病はとても多く、どの医者も祈祷師も手を出せなかった。
日に日に弱っていく男を気の毒に思った椿は、山奥に住むどんな病でも治癒させる薬を持つ鬼に会いにいく事にした。
鬼が山奥の鬼の館へと訪れた椿を見るなり、その美しさに一目惚れをした。しかし、彼女には婚約者が居ることも同時に知ってしまっていた。
鬼は彼女の要求を聞き入れると、一つの条件を出した。
'病を治す薬を渡す引き換えに椿の魂を貰う'
しかしその契約に椿は怯むことは無かった。二つ返事でその契約を飲むと、鬼は彼女に薬瓶を二つ渡した。
一つは病を治す薬、もう一つは恋心を忘れさせる薬。勿論、二つ目が何の薬かは話さなかった。しかし、絶対に二つの薬を飲ませなければならないときつく言い聞かせた。