第6章 デートの練習
「あー、ごじょ……」う先生、こっち来ないで、と言いかけて途中で口を閉じた。
名前は言っちゃいけない。尻すぼみに声をひそめたけれど、ひょっとしたら五条ってボブに聞かれてしまったかも……。
五条先生が私の隣に立つと、ボブはワァオ! って両頬に手を当てた。目を大きく開いたボブが玄関から出て五条先生の方に近付く。
「オーマイガー! メキシカン?or ラッパー? ジョー、ハジメマシテ」
「ジョー?」
五条先生がなに? って顔してる。私も何だろうと思ったけど、すぐにその答えが導き出された。
私が五条と呼んだのを、ジョーと聞き間違えたのだ。彼の容姿が日本人っぽくないから、余計にジョーという名前だと思ったに違いない。
私はそれに乗っかる事にした。日本人っぽい名前を使うよりこの呼び名の方が正体がバレにくい。五条先生にそれが伝わるようにそっと目配せする。
「イエス! ヒーイズ ジョー。来日したばっかだけど日本語は堪能なの。ね、ジョー、そうだよね、ジョー」
「どうも……ジョーです」
五条先生、ナイスぅ! 私のこの視線の意味を感じ取ってくれたではないか。
「ベルト、ムチヨリイタイ」
ボブが五条先生に話しかけてる。その話はいいんだよボブ。
「じゃあね、ボブまたね、ありがと。行こっ、ジョー」
そう言って五条先生の背中を押して、部屋へと戻った。