第3章 标志
「 上手く言えねェけど、なンつーか……嫌な予感したし、普段ならL!NEも既読なら付くのに音沙汰もねェし、誰にも報告してねェし…どうせマイキーにもほぼ話してねェんだろ? つーことは、……いつもと違う用があって、いつもと違う場所に行って、いつもと違う行動をしてた………合ってるか? 」
……すげェな、コイツ。
真実に近いことを言い当てられた焦りよりも先に、やっぱり春はうちのことをよく解ってンだなァ、と素直に思った。
「 ……ン、合ってる。 よく解るな、超能力者? 」
「 …夏専門のな 」
「 うわ、流石うちの春 」
わざと戯けた口調で事実を認めてあげれば、しっかりとノッてくれる。
固く震えていた声は幾分か和らいだ。
因みに鼻を啜る音からは目を背けてやった。
縋り付くかの様に埋められていた頭を肩口から引き剥がし、髪を撫でると頭を擦り付ける様に伸び上がって来る。
……ンなに上に行かれると届かねェ。
「 春 」
「 ン 」
「 届かねェから頭下げろ 」
「 ……ン 」
そこまで心配させるとは思わなかった。
いつも通り、詳細さえはぐらかせばいいやと思っていた。
だけど、いつも通りではないことを春は見抜いていた。
「 ごめんな、 」
だからうちも素直に謝ることにした。
詳細は言えねェし言わねェ、「春を守るために生まれ育った今は敵対している組織に頼み込んできました」なンて言えるハズがねェ。
でも、どうしても伝えたかった。
「 春にとって害はねェし、寧ろ良い方向に進むハズ故の行動だ 」
「 …………詳細報告は 」
「 ……悪ィ、 」
「 …………そォかよ 」
声のトーンが下がっていく春に、コレは失敗した、と背中を冷や汗が伝う。
と、
「 ………………、春? 」
強く強く、抱きすくめられた。
「 夏が無事ならもう、どうでもいい、 」
「 …… 」
「 怪我はしてねェ、だろ? ならもう十分 」
「 ……、… 」
「 帰って来てくれてありがとう 」
柄にもなく、ぶわりと心がざわめいた。
こういう変なトコで、うちに対する気持ちを真っ直ぐ伝えて来るから堪らない。