第2章 水玉天国
俺が栗原さんに出会ったのは入学式の次の日だった。
入学式はよく晴れて暖かく、花粉に苦しむ声もあがったくらいだった。しかし、翌日はその影もないほどどしゃ降りで、入学早々憂鬱だなんて感じていた。学校が始まりたてで一緒に帰る友人はいない。
何となく雨の日は探索がしたくなるもので、静かな校内を歩き回っていた。しとしとというよりもザァザァと何かを掻き消すような雨音は妙に心地が良いもので、永遠と聞いていられる。
「にゃあ」
……雨でも消えない、俺を呼ぶ可愛らしい鳴き声が飛び込んできた。導かれるように視聴覚室のドアの前に立つと、そこには濡れた体を震わせて水気を払うトラネコと、そんな猫に触れることはしないが、ただただ見守る女生徒がいた。
「見つかっちゃった? 悪いけど静かにしててね、もう少しこの子を雨宿りさせたいから」