第3章 はるか上空での欲望と理性の戦い
白いリトの戦士に背中を押され、防寒服に身を包んだ若い青年が、神獣ヴァ・メドーに降り立った。
何故かワープ地点や内部装置が既に起動している状態で、訝しげに思いながらも彼は制御端末へ足を運ぶ。
メドーの奪還はもちろんのこと、ここへ来る前に小さなシーカー族から「仲間がメドーに行ったきり戻ってこない。覚悟はしてるけど、探して欲しい」と頼まれ、同時進行で探す。
一通り見て回ったが、足跡や私物が一切見つからなかったため、青年は探索を半ば諦め、とりあえず制御端末のところへ行こうとパラセールを広げた。
凍てつくような冷気に晒され、リトの羽毛で出来た防寒服の僅かな隙間から冷たい風が入ってくる。
寒さで鼻と頬を赤らめながら、メドーの中心にある制御端末へ歩み寄った時、彼の第六感にも似た危機感が青年の足を止めた。
制御端末の裏の辺りから、怨念の沼が滲み出ている。
弓を取ると、制御端末からなるべく距離を取りながら裏側へ回る。
いつでも放てるよう弓を番え、勢いよく裏側へ来たところで、彼は思わず「あっ」と声を上げ瞠目した。
そこには、かつての仲間─英傑リーバルと研究者のマヤが、お互いに体と体を密着させ、絡み合いながら怨念の沼に取り込まれ、厄災の手に落ちた2人の姿があった。
その表情は、どちらも恍惚とした笑みを浮かべていた。
まるで死の概念すら無くしてしまっているほどに美しく、恐ろしく、そして甘美だった。
しばらく呆然と立ち尽くすリンクの気配を感じたのか、厄災─リーバルはゆっくりと目を開けた。
聡明な瞳と、邪悪な眼がかち合う。
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あとがき
最後まで読んでくれてありがとうございます。
本当にありがとうございます。
そしてごめんなさい。
あなたこそ真の勇者です…。
滅多に後書きとか書かないですが、こればっかりはちょっとやりすぎた感あったので、ここで懺悔させてください。
本当はHAPPY ENDとBAD ENDの両方書くつもりでしたが、力尽きました…。
もし、ご希望される読者様がいらっしゃいましたら、どこかしらにコメントして頂ければ、私頑張ります!
本当に、ありがとうございました。
(短編のつもりがガッツリ中編になってしまった)