第14章 ある日の番外編【娘の祝言】
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★この番外はifではなく本編に繋がっている物語です
美月から嫁に行くと告げられた日、黒死牟は酒を樽で買い屋敷に帰った。丸く美しい月夜の晩、独り酒を飲む…
黒死牟「きっと美月は…このような晩に産まれたのだろうな…」
筈だった!
殺奈落「こんばんは黒死牟殿。月見酒ですか?」
黒死牟「あぁ」
邪魔が入り、黒死牟はこの上なく不機嫌だ。一瞬だけ殺奈落を睨みつけるとまた月を見上げて酒を胃に納めていった
殺奈落「ご一緒しても?」
黒死牟「チッ…好きにしろ………」
普段なら刀で斬りつけるところだが目出度い日の前夜、わざわざ争いを起こす事もないと思ったのか、黒死牟は何もアクションを起こさなかった。殺奈落は何処から持ってきたのか湯呑みを出して酒を酌む
殺奈落「何かあったのですか?斬りつけて来ないなんて黒死牟殿らしくない」
黒死牟「ふんっ……明日は我が娘の晴の日、貴様の血など見たくもない…」
殺奈落は面白いのか、クスッと笑う
黒死牟「何が面白い…私の可愛い娘が嫁に行くのだぞ!」
殺奈落「いや、すまない。黒死牟殿に娘さんが居たとはね」
黒死牟は自分の過去の話を他者にしない。無惨意外の他者とこれだけ長く話すこともないのだった
黒死牟「本当の娘ではないがな。双子の弟と私が愛した…否、今でも愛する女との子……双子は親より血が濃い、ならば娘同然…」
殺奈落「一卵性ならそうでしょうね、確かに親より血が濃い。それよりも黒死牟殿にも愛という感情があった事に驚きましたよ」
ギロリと六つ目で横を見ると、殺奈落も月を見上げていた
黒死牟「私にも愛するという感情はある。その女に限りだがな…娘とは会った事が無かったが顔でわかった」
黒死牟は美月を、あくまでも『娘』と言う
殺奈落「そんなに似ていたのですか?」
黒死牟「あぁ、思わず娘の母の名を呼んでしまう位にな…」
自分とまゆの子は既にこの世には居ない。一時でもまゆとの日々を、一瞬でも在ったかもしれない幸せを感じさせてくれた美月は、血の繋がりの濃さも有り黒死牟の中では娘として存在しているのだ
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