第11章 痣者の宿命と妻の正体
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月日が過ぎるのは早いもので、美月はもうすぐ二歳になろうとしている。まゆは後半年で二十五歳。体調を崩し始めたのは先日の事
暫く雨が続き、その日は数日ぶりの晴天だった為に縁壱とまゆは纏めて洗濯をしていた
まゆ「いっぱいだね~」
美月「美月もお手伝いしゅる!」
縁壱「では、これを干してくれるか?」
縁壱は美月に手拭いを渡し、娘の小さな身体を抱っこで持ち上げた。そんな日常の光景をまゆは微笑ましく見ながら洗濯を干していく
「良いなぁ~私も抱っこさ…れ…(あっ、なんか目眩が…)」
縁壱「まゆ!!」
倒れかけたまゆを美月を抱っこしながらも、縁壱が片手で受け止めた
美月「お父しゃん!お母しゃんが死んじゃう!うわぁーん」
縁壱「美月、お母さんは大丈夫だ。布団に運ぶから降りような?」
急いで布団に運び寝かせると、縁壱はまゆの体内を透き通る世界で視るが、これと言って異常はない。美月は落ち着きを取り戻して今は積木で遊んでいる
縁壱「体内に異変はない…なのにどういう事なのだ…?」
今までの痣者は二十四歳を過ぎると肺の機能が低下したりと、何かしらの変化が訪れていたのだが、まゆには変化がない為に縁壱は首を傾げていた
美月「お父しゃん、お母しゃんは寝んね?」
縁壱「あぁ、疲れたから眠っているだけだ」
規則正しい寝息と正常な脈拍、そして正常に回っている体内の機能。本当に眠っているだけだと分かる
眠ってから一刻程して目を覚す。縁壱はまゆが倒れてからずっと布団の脇に座っていたのだった
まゆ「ん………縁壱さん…」
縁壱「体調はどうだ?」
縁壱は体調はどうかと聞きながらも、起き上がろうとするまゆを手で制した
まゆ「眠いだけだから大丈夫だよ」
縁壱「無理に身体を動かすでない。まだ寝ておれ…」
縁壱は『例え一日でも長く妻に生きてほしい』と願いながら日々過ごしてきたのだった。布団から離れられなかったのは、いつどうなるかが分からないのが怖くて仕方がないからだ
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