第7章 柱になる
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暫くするとまゆが落ち着きを取り戻した。そのタイミングを見計らい、巌勝がまゆに視線を合わせ、ゆっくりとした口調で話し始める
巌勝「私との事は秘密にすれば良い、そうすれば今まで通りだ。二人きりの時に私だけを見てくれたらそれで良い…まゆの気持ちを止める事は出来ないのだから」
気持ちが通じ合う事、口付けも身体を重ねるのも全て自分だけであれば、少なくとも、これからも知らないふりは出来ると思っての事だった
まゆ「本当に良いのですか?」
巌勝「武士に二言は無い。それに私は何も知らぬと言っておるだろう?知っていても知らぬ、そうでなければまゆは手に入らぬ…(いつか縁壱を忘れ、私だけを愛してくれたら良い…)」
何を置いてでもまゆが欲しい巌勝の精一杯の言葉。まゆには巌勝の気持ちが痛い程に分かってしまい、頷くより他は無かった
まゆ「それでは私、最低な女ですよ…二人を騙す事になりますから…」
しかし罪悪感とは中々拭えないモノであり、不安は募る
巌勝「態度を変える方が酷だと私は思う。それに私は騙されてなどいないから…なっ?」
まゆ「…わかりました」
どちらが正解かはわからぬ故、とり敢えず黙っておいた方が良いと巌勝が判断したのでまゆも従う事となる
巌勝「まゆ、愛してる…」
まゆ「愛してます。あの日からずっと変わらず…(私ってこんなに欲に塗れてたんだ…)」
巌勝の腕に抱かれて口付けを交わしながら、まゆは別れたあの日を思い出していた。巌勝にせめて関係を続けたい、正妻にと言われた時まゆはこう言ったのだ
『お嫁さんに失礼ですから…それに多分私が耐えられない。きっと今より苦しい…』
『私我儘なの。私にしか触れてほしくないから…それは巌勝さんを愛し過ぎた私の罪、そんなことになれば自分が許せなくなる…』と
少し状況は違うが自分は今、それをしているのではないかと。その通りなのだが巌勝との深い口付けによりまゆの思考は奪われていく
まゆ「んふっ…んっ…」
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