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お隣さんはブラック本丸

第7章 南海太郎朝尊という男


 南海太郎朝尊。僕の名だ。僕が顕現した本丸には一人の主がいた。栗色の髪には美しい艶があり、猫のように釣りあがった瞳に薄く彩られた赤い唇。すらりとした背は女性にしては高く、近代の女性はここまで美しいのかと目を見開いたのを覚えてる。
 はじめましての刀は絶対に喚んでいるらしく、彼女は笑顔で僕と肥前くんを迎えた。良い本丸に恵まれたと思っていたのは僕だけだった。

「気に食わねぇな、あの女」
「……おや」

 彼女と別れたあと、肥前くんが敵意を丸出しにして告げた。動物的本能だろうか。その瞳には嫌悪が滲み出ている。
 その時は対して気にも止めなかったが、彼の本能が正しいと知るのは早かった。陸奥守くんを見つけたのだ。赤く滲んだ服を着て、手入れもろくにされていない状態の。
 抗議したのを覚えている。なるべく冷静に。心の内を読まれないように。

「私に逆らう子はいらない」

 そう告げた彼女は僕の頭を打った。近くに合ったお盆で。僕が誤ちを認めるまで。
 軽傷という状態で放置された僕はどうすることも出来ず、ただ暇を持て余しながら、バレないように策を練りながら過ごしていた。
 ある日のこと。肥前くんが、彼女がいないのを見計らって僕の元へとやって来た。珍しく楽しそうな雰囲気で。
 詳しく聞けば、越してきたばかりのお隣の娘さんが変わっているという。まだ幼いその子に、肥前くんが心を開いているようだった。

「君がお隣のお嬢さんかい?」

 蝉の声は夏を感じる。燃え盛るような熱さが肌を焼くような日に、お隣の娘さんと出会った。柔らかそうな黒髪に、少し垂れ下がった青い瞳に薄い唇。可愛らしいという言葉が似合う凛とした少女だった。
 彼女と話すために少し離れた所に行った。彼女は僕を"先生"と呼んだ。何も教えていないのにも関わらず。
 僕が彼女に問おうとした直後、遡行軍が現れた。咄嗟に彼女を守らなくてはと動いた体が、彼女を抱き寄せた。しかし、腕の中にいる少女は僕を突き放して遡行軍に不敵な笑みを浮かべた。

「来なさい、遡行軍!!」
「怖気付いたの?」

 煽るように口角を上げた少女は、少女には程遠く、僕の知る主よりも審神者らしかった。彼女に向けて伸ばした手は彼女には届かない。
 僕の為に囮になった少女は遠くへと駆けていく。探さなくては。あの娘を。死なせてはいけない。
 君は一体何者なんだい。
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