第6章 平行世界
そう。ここは平行世界。出会う人が同じでも同じ場所、同じ時で出会うとは限らない。
蝉の鳴く声が夏を知らせる。蝉の声だけでも暑いと感じてしまうのは、恐らく日本人の性。
ため息をついていた朝も終わり、学校終わりの今、私のテンションは高くなっていた。いつもなら帰りたくないとゆっくり足で帰るのにもだ。
「……不気味」
突然聞こえた失礼な声に、振り向くと同時に蹴りを入れようとすれば、軽々と避けられる。ムカつく。
「なんだよ」
「買い物帰りだ」
可笑しそうに喉で笑う肥前に威嚇すれば、軽く頭をぽんぽんと撫でるように叩かれる。その手の温もりがいつもと変わらなくて、小さく笑みが浮かび上がった。
ご機嫌な私がそんなに珍しいのか、無言で見つめられ続ける。視線が鬱陶しいと言うように睨みつければ、また喉で笑われる。なんなんだ。
ご機嫌な理由を肥前に問われて、肥前を見つめながら口角を上げて告げた。
「前世の友達と再会したの」
「は?」
「因みにあっちも前世持ち」
ブイサインをしながらキャッキャッとしてれば、肥前の眉間の皺が濃くなった。何をそんなに気にしているのか。
呑気な私を他所に、肥前は私が転ばないように後ろ向きで歩くのを止めさせる。
未だに肥前の眉間が深いままで、どうしたのか不安になっていれば、少し悩んだ様子の肥前が意を決したように言葉を零した。
「……おれ以外に言ったらどうだ?」
会話の流れからして前世のこと。思わず立ち止まって肥前と見つめ合う。
なんで。と、問いたかった。肥前の言いたいことは分かる。私が時間遡行軍に襲われてる理由が、前世関連だと思っているからだ。
なら三日月や他の連中に話した方が身の安全にもなる。けれど、話してどうなる? 話したら確実に、いつか肥前の所の審神者にバレる。そしたら傷つくのは、間違いなく肥前達だ。それだけは絶対に避けなくてはならない。
「今は言わないよ」
「……」
「……お前らとあの子に被害が来るのなら話す」
「……いいのか、それで」
「……今はまだ」
それが最善なのかはわからない。だがそうするしか方法が見つからない。
なるべくなら隠し通す。前世のことも。友のことも。
守れるのなら守り抜きたい。目の前にいる男のことも。力は無いけど。
何事も無かったかのように微笑んで、安心出来る手を握りしめて家に向けて歩いた。
