第6章 平行世界
おれだけが知ってるあいつの秘密。あいつが前世持ちだということ。前世と想像して、おれが浮かんだのは明治や幕末のこと。
だが、あいつの言う前世は恐らく明治や幕末のことでは無い。古臭くないのだ、喋り方や考え方が。どちらかと言えば現代寄りだ。
詳しく前世のことを聞こうとしたこともあった。だが、必要以上に踏み込まれるのを嫌うあいつは答えてはくれないだろう。
「先生、無事か?」
軽傷の状態で放置されてる先生を見に行けば、特に気にした様子もなく、いつも通りよく分からないモノを制作していた。
げんなりとした顔で先生を見つめれば、楽しそうに自分が作ったモノの説明をし始める。放置されているからか、審神者の監視の目が届いてないのだろう。
「ところで肥前くん」
「なんだ?」
「彼女は元気かい?」
彼女とは、隣の家のあいつのこと。まだ先生はあいつと出会ったことがない。
色んなひとから話を聞くからなのか、ある日先生はあいつに興味を持った。連れて来ても構わないが、何せあいつは変に勘が鋭い。気づかれて逃げられる可能性もある。
まぁ多分大丈夫だとは思うけど、単純に色んな連中と出会うとあいつがおれ達のことを気にし始める。
「不安かい?」
「……」
「大丈夫だよ」
何が。と動かしかけた口は音にならない。
先生とあいつを会わせたら、あいつの事を知れるかもしれない。けれど、それがあいつに不利益だった場合。おれはあいつに、嫌な思いはして欲しくはない。
無言で悶々と悩んでいたら息を軽く吐く音と、笑う音が聞こえた。
視線だけを先生に動かせば、先生は楽しそうに、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「君がそんなに人を気にかけるなんて」
「……そうか?」
「うん、そうだよ」
自分ではそんなつもりなんて無いんだが。先生にはそう見えてるようだ。
それもそうか。この本丸に来て誰かを気にかけるより、あの審神者を殺した方がいいと考える方が多かった。
あいつに関しては変な女だと思ったから。普通の子どもではないと思ったから。興味が湧いたから。おれ達のことを知っていそうだったから。
ぽろぽろと色んなものが思いつく。なぜ、気にしてるんだろうな。人斬りのおれが、あいつを。
「君は彼女のことが好きなんだね」
「……は?」
ふわりと優しく先生が微笑んだ。理解は追いつかなかった。
