第2章 再演
窓についた水滴を眺めては、梅雨の訪れを実感する。梅雨はあまり好きではない。じめじめとするし、お気に入りの服も濡れる。
最近は天使やメイドが現実にも干渉するようになってきた。幻覚だろうが。自分は疲れているんだと思いつつ、ベッドに横になる。
ふと思う。天使の言ったように電車に飛び込むことやクラスメイトの死が現実になるとしたら? 嫌だ、それだけは絶対に避けたい。
かといって、何をすればいいのかわからない。ため息をついて、この前からクラスメイトになった律に相談しようとしてやめた。これは私がどうにかするべきものだ。
「アオバ、お友達よー」
そうか、今日はカエデに服を選んでもらう約束があったっけ。前に遊んだ時に服についてあーだこーだ言われたので、とりあえずファッション誌は見たのだが……。
ジャージからおしゃれ着に着替えて家を出る。今日は曇り。ついてない。
「笑ってる顔が一番好きだよ」
ふと、言われた一言。確かに、笑うことは少ないのだが……、笑わないということでもない。
目の前にはカエデの大好きなプリン。もしかしたら、無意識に笑っていたのかもしれないなと、苦笑いする。
「アオバはさ、なんというか……、みんなと話すのを避けてる感じがする。でも、それってもったいないんじゃないかな」
「そうかな……、考えたことなかった」
「もったいないよ。みんな、アオバと話せるようになるのを待ってる」
きっと殺せんせーや烏間先生もそうだよ、とカエデが言う。胸が苦しくなった。私はイレギュラーだ。いてはいけない存在なのに……。
「……ごめんね、いつも迷惑かけちゃって」
「迷惑なんかじゃないよ、ずっと一緒にいてね」
約束、と差し出された小指で指切りをした。
カエデは、もしも私が原型を失うぐらいまで疲れ果ててもそばにいてくれるだろうか。そんな希望だらけのことを考えては、私は残ったプリンに手をつけはじめた