第1章 白雪姫
隣国の王子ドラケンは、見知った姫の変わり果てた姿にとても胸を痛めました。
マイキーの周りを囲んでいた皆も一様に暗い表情をしており、すっかり元気をなくしています。
「マイキーが悪いんだよ…殺さなきゃ…」
「そんな悲しいこと言うなよ…一虎ぁ」
精神が錯乱した一虎の繰り返す独り言にひどく悲しくなった場地は、壊れた一虎を抱きしめ寄り添います。その様は絶望の光景そのものでした。
「マイキー…」
ドラケンが駆け寄り、眠っているかのようなマイキーを抱き起こします。その頬に触れ、祈るように声を掛けました。
「頼む、目を開けてくれ……マイキー…!」
これで最期なのか…?
そう思うといたたまれなくて、思わずドラケンはマイキーにキスをしました。
「…んっ……ふ…ぁっ」
するとどうでしょう、毒りんごを吐き出したマイキーは息を吹き返しました。
「…ケンちん…?あれ俺どうしてたんだっけ」
「マイキー…!目覚めたのか!生きててくれて良かった…!」
気が付くとドラケンの腕の中で、涙を滲ませながら彼がこちらをのぞき込んでいます。唇に残る感触を思い出し、マイキーはじわじわと頬が熱くなるのを感じました。
「いやあのケンちんさ、どさくさに紛れてなに濃厚なキスしてくれてんの?」
「……え?」
「え?じゃねえよ。おい」
恥ずかしさでつい、ドラケンを問い詰めてしまいます。
「いやそれは…オレも切羽詰まっててよー…」
「言い訳してんじゃねえぞ」
「何だよ、そんなに照れんなよマイキー」
「照れてなんかねえって…やめろよ」
ドラケンの口づけに内心動揺していたマイキーは、プイとそっぽを向きました。
「なに機嫌悪くなってんだ、お前が心配で…必死で駆け付けたってのに」
「…ごめん、ケンちん」
「ちゃんとこっち見て言えよ、ほら」
ドラケンにぐいと顎を掴まれ、正面から至近距離で見つめ合います。
「…ケンちん」
小さく呼び掛けると、マイキーはニコッと微笑みました。本当は嬉しくて感謝を伝えたかったのです。
「ありがと……好き」
「ッ、お前…可愛過ぎな」