第57章 闘いを終えて
し「移動します!付いてきて下さい!!」
その声に従って天元を抱える蜜璃、行冥を背負い、引き摺る実弥と義勇、炭治郎を担ぐ善逸と伊之助、そして杏寿郎の腕を肩に回した菫と槇寿郎が道を進んだ。
他の隊士達は杏寿郎達程の深刻な怪我を負っている者が少なかった為、十分に手が足りているようだった。
そうして傷だらけの隊士達は凱旋したのだった。
槇「…婚約者、と言ったな。」
「はい。」
道中、二人は暫く無言だったが、蝶屋敷まであと半分だとしのぶが報せたのを機に漸く槇寿郎が口を開いた。
(お父様が此方にいらっしゃるとは思わなかった。戦いについてはどこからお聞きになったのかしら…。ともかく、駆けつけると言う事はやっぱり杏寿郎さんの事を心配なさっていたのだわ。)
そうは思いつつ、菫は杏寿郎の頬に出来た切り傷を思い出すと少々気持ちが荒々しくなってしまった。
槇「…杏寿郎は私の事を話していたのだろうか。」
「はい。お父様はきっと身の心配をして下さっているだけなのだろう、と。杏寿郎さんは心が澄んで綺麗でいらっしゃるので心からそう仰られていました。」
少し棘のある声に槇寿郎が菫を見る。
そしてその凛とした横顔を見つめると、杏寿郎が惹かれた気持ちが分かった気がした。