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短編集

第1章 ジェイド【ツイステ】


 ことは数分前に遡る。
 ひと月ほど前、突然現れた異世界人である鵲あやめ。学園内唯一の女性である彼女と、偶然にも遭遇してしまった。遭遇したと言っても、たまたま通りがかったところに彼女がいたというだけ。普段ならば目には止めても気には止めなかっただろうし、近づくことなど決してなかっただろう。
 だが今回はタイミングが悪かった。彼女は、みるからによからぬことを考えている複数の学生たちに取り囲まれているようだった。しかしそんな男たちを前にしても、怯えた様子はなく、ただ少し、俯き気味に黙っていた。
 僕もフロイドも、そしてアズールも、どこからきたとも知れない異世界人に、気安く許す心は持ち合わせていない。もちろん、アズールの契約書があるため、彼女の言動全てを疑っているわけではないが、そうは言っても全てを信じ切ることなど、当たり前だが不可能だ。契約を結んだあの時、あの場でアズールに語ったことが真実だとしても、今現在を流れる時間の中で、彼女がとる言動が全て白であるなんて保証はどこにもない。
 そのため僕たちは、彼女との距離は一定に保とうと、そう決めていた。必要以上に関わらないと、そう決めていたのに。

「おやおや、女性一人に複数でそのように……あまりにも卑怯な現場ですね」

 このような現場に遭遇したとあっては、見なかったふりは流石にできない。何が起こるかなど目に見えているのだから。
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