第6章 相反☩そうはん☩感情
「(やっぱり、あなたを見ていると、
皆がどうしてあなたに惹かれているのか、何となく分かるような気がします)」
小声で呟かれたその言葉はヴァリスの耳朶を掠めず、思わず彼を見上げる。
「………? なあに?」
不思議に思ってそのおもてをじっと見つめると、再度その目元に朱が集う。
自分のおもてを見上げる瞳から視線を解き、ふいとそっぽを向いた。
「な、何でもありませんからっ」
顔を紅くしたままそう呟くさまがあまりに可愛らしくて、くすりと笑みを零す。
くすくすと微笑うヴァリスに益々紅くなると、
「あなたのそういう所、本当にずるいです」と少しだけ拗ねた様子で呟かれる。
ヴァリスは笑みを収めて唇をひらいた。
「ご、ごめんなさい。何だか……懐かしかったの」
「懐かしい……ですか?」
「うん。何だか私に懐く前のマリスを見ているみたいだったから」
そう告げながら、その瞳が懐かしそうな煌めきを宿す。
けれどその優しい光を放つ双眸に、別の感情が映っていることを自覚する。
出逢ったばかりの頃のマリスは、何処か冷たくよそよそしかった。
飼い主であるヴァリスのことを、警戒しているふしがあった。
森のなかに捨てられていた彼を拾ったヴァリスを、
信頼してくれるようになるまでには、少し時間を要するのかもしれない。
けれどヴァリスはそれが寂しかった。
今のように、彼女の影のように寄り添うようになったのようないつからだろう………。
————その日、ヴァリスはマリスと祖母の家のある森のなか、
その中心地に位置する美しい花の園へと赴いていた。
マリスが彼女に着いてきてくれたことが嬉しくて、
ヴァリス は様々な花を摘んで花冠を作っていた。
深い紫に染まる、リラが好きなライラックの花に似た野花に
指を伸ばしかけたその時………。