第3章 変化
「ずーん、、、」
「え、さくらちゃん、大丈夫?ずーんなんて自分で言ってる人初めて見たよ」
ウラビティが心配そうにさくらの顔を覗き込んだ。
さくらは焦って誤魔化した。
「あ、、、ウラビティさん、、、ちょっとだけ疲れちゃって」
「あんま大丈夫そうちゃうね、、、リカバリーガールのとこに行きだして、結構経つし、疲れが出てるんちゃう」
バルコニーに腰掛けて温かい紅茶をすする。
ダイナマイトが怪我をしてから、夜の警護はウラビティともう1人の女性ヒーローが担っていた。
あの翌朝。
さくらが救護室に向かうと既にダイナマイトの姿はなかった。
リカバリーガールによると、もう治ったからとさくらが来る前に帰ってしまったらしい。
それからさくらはダイナマイトと会っていない。
女性ヒーローが補充されたから、もう警護の必要もない。
そういうことなのだろう。
「仕事は楽しい?」
「はい、それはもちろん!病院とは違うけど、やりがいがあります。皆、とても良くしてくれるし」
「それはさくらちゃんが頑張ってるからだよ。リカバリーガールも抜けてるとこもあるけど、良い子だって褒めてたよ」
「ぬ、抜けてる、、、ですか泣」
「問題は爆豪くんだよねー」
「!」
その名前を聞いてドキリとする。
思わず、唇に手が伸びた。まだ彼の感触が残っている。
「爆豪くん、独占欲の塊だから。さくらちゃんが皆のものになっちゃって、寂しいだけと思うけどねー」
「そ、そんなことないですって。たぶん、危険とかそういうこと考えてくれてるだけで」
ウラビティの言葉にダイナマイトの言葉が重なって、掠れた声が蘇る。
『誰にも渡したくねェ』
まだ信じられない。なかなか醒めない夢を見てるみたいだ。
いや、いっそ、夢だったら良かったのに。
さくらの脳裏にダイナマイトの笑顔が浮かぶ。
『ハッ!何て顔してんだよ』
ダイナマイト、泣きそうな顔してた。
それなのに笑ってくれてた。私が酷い顔してたせいだ。