第3章 変化
ガラッ。
「さくら。いいか?」
次に来たのは轟だった。
「んなッ」
「あっ、はい」
その低い声に爆豪は飛び上がった。
なっんで、お前が来てんだよ。
っつか、何名前で呼んでんだァ?
「あの、リカバリーガールは今日いなくて、、、」
「知ってる。今日はこれを渡しに来た」
珍しく微笑む轟に、爆豪の鼓動が早まる。
「これは、お花?」
「この間、治療してもらった礼だ。こういう花は嫌いか?」
「と、とんでもない!嬉しいです!あ、ありがとうございます!」
何、嬉しそうに受け取ってんだァ!あの女ァ!!
「良かった。ん?なんか膝擦りむいてないか?転んだのか?」
「あっ!はい、さっきちょっと。えへへ、鈍臭くて困りますよねぇ」
「いや、リカバリーガールが不在の中、頑張っている証拠だ。見せてみろ」
「え?あのこれくらい大丈夫、、、」
「バイ菌が入ったら大変だ。大人しくしてろ」
「、、、はい」
さくらを座らせて、その膝に絆創膏を貼る轟。
「、、、ッ!」
その様子に爆豪の体温は一気に上がった。
「じゃ、俺は行くから」
「あ、あの、ありがとう、ございました、、、っ」
爆豪は穏やかな空気が流れる2人に、ただそっとカーテンを閉めることしかできなかった。
その後も、授業で怪我をした雄英生やヒーロー達が男女関係なくひっきりなしにやってきて、さくらの手当を受けていった。
「さくらっち、ありがとう!」
「ごめんね、リカバリーガールが戻ったらまた来てね」
「はい!分かりました!」
治療が完全でなくても、皆、帰る頃には笑顔だ。
それはきっとアイツが笑ってるからだろう。
天井を見ながらここで目が覚めた時のことを思い出す。
そこのカーテンを開けて現れたさくら。
窓からは光が差し込んで。アイツの顔を照らして。
天使、みたいだったもんな。
いや、それまでだってアイツは。
ブランケットを頭から被ったさくらのマヌケ顔を思い出して頬が緩んだ。
今だって、アイツは一生懸命がんばってる。
自分のできることを必死で探して走り回ってる。
不器用でも。カッコ悪くても。
初めて会った日のように。
そんな姿が頭から離れなくて。
放っておけなくて。
惹かれてる。