第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
いつもは角名くんと歩く駅からの道。
自分の家を通り過ぎて隣のグレーのアパートへと足を進める。1階の1番奥…あった!角名って書いてある!ここだ!
ピンポーン
何の連絡もせずに来ちゃったけど…お家の人いるかな。
「…はい、どちらさまで…っは?」
『突然ごめんね、北さんからプリント預かってて…届けに来ました。』
「待って…待ってね。待って…ちゃんがわざわざ届けに来てくれたの…?」
『わざわざって距離でもないけど、私が1番おうち近いし。』
おでこに冷えピタを貼ってTシャツにハーフパンツを履いた部屋着姿の角名くん。ほんのり頬が紅く染まっていて熱のある身体を無理やり起こしてしまったのではと申し訳なくなる。
「あ…ぇあ、少し…上がってかない?」
side角名
あれ、何言ってんだ俺。動揺してる…めちゃくちゃしてる。こんなダル着で髪もボサボサで…上がってく?とかキモすぎかよ…。
『あ、じゃあ少しだけ…』
彼女が玄関に入ったのを確認してスリッパを出す。
「ごめんカーテンとか締め切っちゃってて…いま開けるね」
『体調悪いんだし仕方ないよ…あ、角名くんのお母さんいる?久しぶりにご挨拶したいな』
「あれ、言ってなかったっけ。俺ひとり暮らし…です」
『ひとり…暮らし?』
「えと、ほら、地元帰ったとき妹に会ったでしょ?こっち来てんの俺だけなんだ。」
『そ…うなんだ』
そう呟いて脱ぎかけていた靴を再び履いて勢いよく飛び出して行った。何が起きた…?
待ってもしかして…男の一人暮らしの部屋に連れ込んだみたいになってた…?だとしたら怖がらせたんじゃ…最悪だ。謝んなきゃ…電話、しよ。携帯どこだっけ…ベッドに置きっぱにしてたかな。あーくそ何も食べてないからフラつく…。