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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第14章 初恋の君と (角名倫太郎)



「…さん、…さん?」

『…え、あ…っはい!』

「どないしたん?」

『いえ…すみません。ぼうっとしてました…』

最近見慣れてきた体育館。
隣に立つ北さんが私を覗き込んで優しく背中をさする。そのぬくもりに涙が出そうになるのは嫌な記憶を思い出したからだろうか。

今…部活の時間だったのすっかり忘れてた…

「体調悪いん?さんも昨日の雨で風邪引いたんちゃう?」

『そんなんじゃ…っあの、私に何か用が…?』

「おん、昨日に引き続き悪いんやけど頼み事があってん。」

『私に出来ることであれば何でも』

「合宿の参加・不参加の確認書類やねんけど親のサインが必要やねん。角名の分持っていってほしんやけどお願いできるやろか?」

『もちろんです!』

「ほな、悪いけど頼むわ」

『はいっ』

角名くんのお家は前に1度聞いた事がある。私のマンションの隣のグレーの建物。1階の1番奥って言ってた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

部活終わり、角名くんのいない帰り道は初めてかもしれない。侑くんと治くんと銀島くんと私の4人だけ。スマホを内カメにした侑くんが私の肩を抱き寄せて写真をとる。程なくして届いた通知は侑くんがSNSを更新した事を知らせる。

#1日1マネ(角名の代わりに載せたったで)

「お前アホなん?角名にキレられんで」

「怖ないしーーい!!」

「ちゃんのことになると暴れるで角名」

「暴れときゃええねん!無気力チベスナは暴れとるくらいがちょーどええんやから!」

チベスナってチベットスナギツネのこと…?
=角名くんのこと?

『っあはは』

「ふぇ、どないしたん!?」

急に笑い出した私を見て驚いた声を出したのは侑くん。

『チベスナって…っはは、角名くんのことだよね??』

「せやで、似とらん??」

『似てるかもと思って笑っちゃった…あははっ』

やっぱり誰かといるときはあの記憶が嘘みたいにどっかへいく。もう物理的距離がこんなにも離れてるんだから怯えなくていいのかもしれない。でも定期的にくる連絡が私を縛り付けるみたいに離してくれない。

「ちゃん1人で帰れるか?」

『ぇあ、うん!大丈夫!』

いつも通り皆が先に電車を降りていく。この瞬間…いつも少し寂しいと感じてるけどひとりだと尚更寂しい。
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