第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
チャイムがなると同時にガタン、と立ち上がった治くんが私の手を引いて急ぎ足で空き教室へと向かう。
『そんな急がなくても…っ』
「はよ聞きたいやんか!あと、ツムに見つかる前に逃げんと!」
『え、侑くん?』
確かに高確率でお昼に誘ってくれる侑くんが来るとすれば…
「あー!!サムお前!角名がおらんからってぇ!言ったろー!角名にいーったろ!!」
お、噂をすればなんとやら。
「っ最悪や!1番バレたないヤツにバレた!!」
「治くんは抜け駆けですかあ??」
『あの、今日は治くんと内緒のお話するからお昼の時間中借りてもいいかな?』
「へあ…っも、もちろんやで!」
『ありがとう侑くん!』
「一言でツムんこと黙らせるんほんまおもろいわ笑」
『黙らせてるわけでは…っ』
空き教室に入るなりカチャリと鍵を閉める治くん。
よし、と席についてすぐにお弁当を広げている。
「食べながらでええ?」
『もちろんだよ』
「ほんで誰にも言うたらあかんっていうのは…」
『今朝、角名くんのこと好きになったりしないのかって聞いたでしょ治くん。』
「おん」
『私角名くんのこと好きだった…の。」
「え、いつ!?」
『中学生の頃。私の片想いなんだけどね。』
「そ、それ角名は知っとるんか」
『え?いやいやまさか!選手の邪魔するようなことできないよ。それに今私…彼氏いるの。地元の人だから遠距離なんだけどね。』
角名くんへの気持ちなんて自分の中でとっくに消化できているものだと思ってた。でも今初めて人に話してみて、熱が出たように体が温まっていくのを感じる。こんなのって変だ。だって "好き" は置いてきたはずなのに。
「その彼氏…?は角名よりええ男なん?」
『ふふ、角名くんには負けちゃうかな笑』
「今も…角名のこと好き?」
『…どうかな。もしまた好きになったとしても角名くんのバレーボールの邪魔はできないから…。』
「じゃあ、なんで角名のこと好きんなったんか聞かせてや。過去の話やしええやろ?」
『人に話すの初めてだから緊張しちゃうな…でもそうだね。過去のことだから。あのね…』