第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
電車をおりて隣を歩く北さんが思い出したように私に聞く。
「あ、そや今日角名おらんのかってさっき聞きたかってん。」
いつも一緒に来てたやろって
『角名くん体調崩しちゃったみたいで…今日はお休みなんです。』
「昨日の雨にでも降られたんか?土砂降りやったもんな」
『私はなんとも無かったんですけどね…大事な選手なのにすみません。』
「なんでさんが謝るんよ。買い出し頼んだんは俺やし。気にさせてすまんな。」
大丈夫やでって優しく頭を撫でてくれる北さんの手は温かくてとても安心する。お母さんみたいな感じ…かな?なんだか優しい香りもする。香水…とかはイメージじゃいけどどうなんだろ。
『北さん』
「ん?」
『北さんってあの…っその、』
「おん」
『と、とってもいい匂いがするのですが…っ香水かなにか使ってますでしょうか!』
ちょっと…気持ち悪かったかな…っ匂いとか…
「あ、え…匂い?香水は使うてへんから…柔軟剤とちゃうかな?」
『そぁ、そ、ですか…!変なこと聞いてすみません…』
「ふはっ、どうしたん急に笑
別にええよなんでも聞いてや」
こうやって柔らかく笑う北さんを部活中に見ることはほとんどないからなんだか新鮮で、少し嬉しい気持ちになる。
『あの、北さんて優しいですよね。』
「今度はなんや?そんなことないで。侑たちが怯えとるってアランが言うとったしな。」
『それは…んん、』
「…侑たちのおかげで俺は俺ひとりじゃ絶対に見られへんかった景色見せてもらっとる。俺の後輩すごいやろって…ほんまは思っとる。いつか伝えられたらええんやけど。でも今はあいつらが最大限を出せるように支えたりたいねん。そんだけや。」
北さんの本音…なんか心がジーンとする。
温かい気持ちになる。
ほんとどこまでも優しい人なんだな。
『私、北さんがキャプテンの代にマネージャーでいられて幸せです。』
「俺らもさんがおってくれてほんまに幸運やで。」
『なんだか照れますね』
「はは、せやな」
私も皆を支えたい。
少しでも皆の…北さんの力になりたい。