第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
いつもは少し会話をしてからお互いの家に入るけど今日ばっかりはそうもいかずに、でもばいばいは言いたくて結局彼女のマンションのエントランスまで着いて来ちゃった。
『ぇあ、角名くん…っ?』
「ごめんなんか…ばいばい言えずに帰るのヤダなって思っちゃって…。」
『確かにいつもは少し話してからばいばいしてたもんね』
「…でも今日はびしょ濡れだしちゃんが風邪ひいたら困るから帰るね。」
ちゃんの濡れた前髪に触れてそっと頭を撫でる。明日も会えるのに離れたくないな。
『じゃあ、また明日ね角名くん!帰ったらすぐお風呂はいるんだよ〜』
「ちゃんもね」
『うん!また明日ね』
「また明日」
そのあと家に帰って速攻でお風呂に入ったし、なんならいつもより少し長く湯船に浸かった。なのになんで…。
・
・
・
「はっくしょい…っ」
っあー…最悪。これ絶対熱ある。
朝、目が覚めると発熱特有のだるい感覚。
頭がぼーっとする。
起き上がって水を飲みに立つとやっぱり少し浮いているような、足が上手く地面についてないようなふわふわとした感覚に陥った。確認のために体温計で測ると 38℃…嘘でしょ。ちゃんに連絡しないと。今朝は一緒に行けないって。
〜♪
電話をかけるのはこれが2度目。
1回目は帰省をしたとき。
ちゃんの嬌声が今もまだ耳に残ってる。
《もしもし角名くん?》
「あ、もしもしごめんね朝早くに。」
《ううん、どうかしたの?》
「なんか朝起きたら熱あって…今日は休むから連絡、です。ごめんね。」
《えっ!絶対昨日の雨だよね…私が買い出し付き合わせたからだ。》
「いやいや違うから!俺の体調管理の問題だよ。明日には治ると思うけど今日は休むね。」
《分かった。お大事にね…!》
「ありがとう、じゃあ気をつけて行ってらっしゃい」
《うん、いってきます!》
まだ少し掠れた声。起きてそんなに時間経ってないみたいだった。朝起きてちゃんが隣にいたらどんなに幸せなんだろうな。そんな夢みたいなこと…いや、今度は諦めないって決めたし。