第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
「ちゃん荷物かして。」
『重くないから本当に大丈夫だよ?』
買い出しのものが入っている袋をずっと持ってくれていた彼女に手を伸ばしてみるけど断られるのはこれで3回目くらい。
「北さんにも頼まれてるしさ。ね?」
『うーん…じゃあ一緒に持とう?』
「一緒に?」
はい、と片側の持ち手を俺に差し出してもう片方は彼女が持っている。
『これでおっけー!』
「そうだね笑」
可愛すぎて思わず笑ってしまった。だってこんなの同居してるカップルの買い物帰りみたいじゃん。
『わ…こりゃ満員電車だ…』
ホームに着くとあまりの人の多さに目を丸くする彼女。部活の後だともう少し遅い時間だからこんなに人多くないもんなぁ。
「一旦俺が荷物持つね。」
『ごめんね、ありがとう』
「ちゃんすぐ押し潰されちゃうから俺の腕掴んでて」
『はい…っ』
若干の下心はあれど役得ってやつ。俺の腕をきゅっと掴んだのを確認してから満員電車に乗り込む。
『…っう、』
「大丈夫?もっとこっちおいで」
自分の腕に捕まっている小さな手を引いて毎朝してるみたいにドアと自分の間に彼女をいれる。
『いつもありがとうごめんね』
「このために鍛えてきたから全然だよ」
『っはは、うそつき笑』
「ふは、さすがに嘘かも笑」
乗ってた時間はたったひと駅分だけ。なのに外に出たら空がどんよりとしてて今にも降り出しそう。正確には暗いからよく見えないんだけど湿気というか空気が雨の降る前って感じ。
『わぁ…雨降りそうだね…』
「今のうちにサッと帰ろうか」
なんて言ってたのに駅を出て1分足らずで大雨。
「やっばすぎ土砂降りじゃん…!」
『角名くんのジャージなのにごめんね…』
「いやいや、むしろちゃんの新品が濡れなくてよかったよ」
やばいやばいと騒ぎながらもなんだかんだ楽しくて、普段の俺なら土砂降りに降られるなんて想像しただけで激萎えなのにちゃんといるとなんでも楽しくなっちゃうのやばいな…。