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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第14章 初恋の君と (角名倫太郎)



「ちゃんごめん、車両変えてもいい?」

『ぇあ…うん、でも…っ』

絡みつく鬱陶しい腕を振りほどいて冷たく見下ろせばもう何も言ってこなかった。

「いいから行こ。」

『ぅ、ん…』

戸惑う彼女の手を引いて車両同士を繋ぐドアを開く。ちゃんを先に通してちゃっかり腰に手を添えたりして。せっかく2人だけの時間だったのに邪魔すんなよな。

『あの、角名くんのお友達…良かったの?』

「別に友達じゃない。去年クラスが一緒だっただけだから。」

『でも腕にぎゅって』

「友達じゃない。…でもちゃんが上書きしてくれない?」

『え?』

「俺の腕にぎゅーって、お願い。さっきの奴らにされたの消して欲しい。」

『わか、った…』

腰に添えていた手をちゃんの体にぴたりと寄せると遠慮がちにきゅっと抱きついてくれた。

「…もっとできる?」

『あ、ぅん』

今度はきゅうって感じ。

「うん、ありがと。ちゃんで上書きされた。」

『こんなんで良かったの?』

「うん。これが良かったの。」

腕に触れた柔らかな感触がまだ残ってる。大きくはないけど、でも中学の頃よりは成長してたなーとか。いや故意に触ったわけじゃないよ。中学の頃、熱中症でフラついたちゃんを支えた時にちょっとね。あの時は感動したな。

『あれ、降りるのってここかな?』

「うん、降りよっか。」

駅を降りてすぐある大きな複合施設は平日だからかあまり人は多くなかった。

『近くにこんなとこあっあんだ!』

「俺も越して来た頃治達に教えて貰ったんだ。ここなら多分全部一気に揃えられると思うから。」

『確かに揃いそう!教えてくれてありがとう角名くん!』

「こんなの全然。どこか行きたい所があればいつでも着いてくし俺に言ってね。」

『助かる!ありがとー!』

頼りになるね、なんて無邪気に笑う彼女。そんなんじゃない。一緒にいる理由がほしいだけ。俺だけを求めて俺だけしか見えなくなればいい。彼女の生活に少しでも入り込めればって、染めてしまえればってそんなことばっか考えてる。
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