第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
自分の中で一気に揃うところはどこかと探す。
「うーん、全部いっぺんに買うってなったら電車乗って行った方がいいかも。俺たちの最寄りの1つ手前の駅に大きいドラッグストアがあるからそこ行こ。」
『分かった!角名くんに着いてく!』
「うん、任せてね」
『一緒に来てくれたのが角名くんで良かったあ!』
えーーー可愛すぎない?ずっと可愛すぎじゃない?俺に着いてくって時点で結構キてたのに俺でよかったなんて言われたら無理なんだけど。心臓痛いんだけど。
『角名くんは優しいね』
「え、なんで」
『だって私がまだ馴染めてないから角名くんが来てくれたんでしょ?ありがとう!』
「いやいや、馴染めてるでしょ。俺より1年と仲良いじゃん。」
中学の時もだったけど下の学年から懐かれるスピードがハンパじゃないの。褒め上手で優しくて皆のお姉ちゃんみたいな。好きになっちゃうやつも何人かはいたから多分こっちでも一緒。
『…?じゃあどうして来てくれたの?』
「んーないしょ。」
『内緒なの?もーっ笑』
好きだからって言ったらあいつと別れてくれんのかな。それなら喜んで伝えるのに。好き。大好き。俺だけ見てて欲しい。日を追う事に膨らむ気持ちに収集がつかなくなる前に俺があんな男と引き離してあげるからね。
「電車きたよ、乗ろ」
『はーいっ』
部活が始まってすぐの時間だったから電車にはいつもなら会わないような人も乗ってる。なんかこの時間に電車乗るの新鮮。
「すーなっ!」
ドン、と勢いよくぶつかってきた衝撃と一緒に強い香水の香りが鼻をつく。
「今日オフなの?私たちカラオケ行くんだけど角名もきてよお」
「オフじゃないし行かない。」
「え〜なんでよぉ!電車乗ってるってことは帰りでしょ?」
「部活の買い出し中だしマネージャーと一緒だから。」
『ぇと…、こんにちは!角名くんと同じクラスのです!』
「ふうん、ちゃんさぁ角名借りてっていいかな?」
『え、っと…』
「だめなの?」
俺の返事も彼女の答えも聞かないまま俺の腕に自分の腕を絡めてデカイだけの胸を押し当ててくる。
「触んないで。香水の匂いもキツすぎだし勘弁して。」
「え…っ?」
驚いたように目を見開いているけど腕を離してはくれない。