第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
尾白さんの声がする。3年生来たかな。
「さんジャージ届くんえらい遅いな」
『あ、北さんお疲れ様です!』
ちゃんに背中から声をかけたのは北さん。俺らに向けるのとはまるで違う優しい顔。最近は北さんがお母さんに見えてきた。
「お疲れさん、まだ届かへんの?」
『えっと、』
「北さん聞いてくださいよ!角名がねぇ?ちゃんジャージ届いたんにワガママ言うていつまでも自分の着せとるんですぅ!ほんっまにも〜叱ったってください!」
は!?余計なこと言うなよバカなの!?
「ははっ、角名はほんまにさんが好きやな笑」
「え、あれ…」
怒られない……?
「北さん!?角名ワガママ小僧ですやん!怒らないんですか!」
「こんなんで怒らへんよ俺の事なんやと思っとるん侑は」
「…っす、素晴らしいキャプテンや思うてます…!!」
「まあ、あんまワガママ言うてさん困らせんようにな」
「あ、はい…」
北さんの後ろに立つ侑が北さんにバレないように俺を睨む。なんで怒られへんねん、の顔。平気で俺を売りやがって覚えてろ。
「あ、そうや。バレー部のジャージも届いたからあとで渡すな。」
『わあ!ホントですか!ありがとうございます!』
「サイズ勝手にSにしてもうたんやけど平気やろか」
『大丈夫です、ありがとうございます!』
えす?エス?Sサイズぅ??小さい!可愛い!ち○かわ??ちゃんて○ぃかわだったんだ!俺のジャージXLだもんそりゃデカいわけだよね。
『あ、角名くん!』
「なになにちゃん」
『お土産渡そ!終わったあとがいいかな?』
「あー、あとにしよっか?」
『うんっ』
「ちゃんが今持ってる?」
『部室に置いてあるよ!』
「了解、持ってきてくれてありがとうね。」
『そんなの全然だよ〜』
後で持ってくるね、と言って準備運動の始まる俺らの輪から抜けて彼女は監督にメニューの確認をしに行った。
ノートにずっとなにかをメモしてるみたいで、北さん曰く一人一人のプレイスタイルとかその日の調子とか全部記入してるんだって。まだ入部してひと月くらいなのにすごいな…中学の時もずっとそうやって支えてくれてたんだなぁ。