第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
着替えて体育館に入ると既に着替えを終えていたちゃんがドリンクを作るためにスクイズの入ったカゴを持って出て来るところだった。
「ひとりで行くの?」
『うん、行ってきます!』
俺のジャージを着たちゃんが俺たちのためにドリンク作りに行った。可愛い。いやでもさすがに重いだろうし手伝いに行こうかな。
『あれ、角名くん来てくれたの?』
「うん、いつもは1年に任せてたけど居ないみたいだから」
『今日はなんかの説明会?があるらしくて1年生は皆遅れてくるみたいだよ』
「そっか、じゃあ着いてきて良かった」
『角名くんは優しいねぇ』
誰にでもじゃないってどうしたら伝わるかな。それにこんな重いもの1人で運ばせられない。腕もげちゃうっていうか何回か往復コースだよね明らかに。男でも1人で全員のスクイズ運べないし。
『あ、そういえば私のジャージって…』
「えと、部室に…あります。俺の荷物んとこに一緒にある。」
『また角名くんのかりちゃってるんだけど…いいの?』
「むしろ着ててほしいっていうか…部活だけでいいから俺の着てくんないかな?」
『あの、じゃあ…ジャージの上だけ借りよう…かな?』
「うんっ」
胸に " 角名 " の文字が入ったブカブカのジャージ。俺のって感じがする。最高に気分がいい。あの彼氏もどきとは物理的に離れてるしなんなら早く別れてほしい。
「あ、今日の#1日1マネ載せてないや。今撮ってもいい?」
『うん!』
俺のジャージを着てスクイズのカゴを両手で持つ彼女にスマホのカメラを向ける。いつもみたいに全身を写して保存して、載せるときは顔が写らないくらいにアップにしたもの。可愛い表情は俺だけが見られればいいからね。
#1日1マネ
#ドリンクいつもありがとう
と添えて載せる。
『通知来た〜』
「よし、体育館戻ろうか。」
『うんっ』
「ていうかそっちのが重いでしょ、かして」
『え、いやいいよ!元々はひとりでやるつもりだったから角名くんが来てくれて助かったよ!』
「俺がちゃんに頼って欲しいの。だから貸して?」
『そ、う…?じゃあお言葉に甘えて…』
ありがとう、と可愛らしい笑顔を向けられると俺は本当になんだってできる気がする。惚れた弱みすぎるよねえ。