第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
「あ、そうださんが抜けたあとの男バレ1週間くらいお通夜みたいだったんすよ」
『あれ、でも角名くんの妹ちゃんがきてくれたでしょ?』
「いや、あいつが1番ちゃんのオタクだから。一緒にお通夜してたに決まってる。」
「そういうことです。」
後輩の中にもちゃんと同じ高校に行ったやつが確か2人。よく懐いてたし追いかけてったのかなって勝手に思ってるけどどうなんだろ。
「部長まじで元気なかったんですけど、なんか最近は…ってこっち帰ってきてから会いました?」
『先輩にはまだ。明日帰る前に会おうかなって。』
もしかしなくてもちゃんの彼氏?聞きたいけど聞きたくない。
「あ、の…部長今日女の人と歩いてましたけど…大丈夫すか」
『…そっか、離れてるしね。仕方ないよ。』
「いやいや仕方ないわけないすよ、おかしいですよ」
『私も向こうでは角名くんたちといるし』
「いやでもそれ学校とか部活とかの話っすよね?」
『そうだけど…でも言ったところで変わらないよ。』
「ちゃん」
『ん?』
「お好み焼きひっくり返すのやらなくていいの?」
我慢の限界だった。聞きたくなかった。
『やりたーい!ありがと角名くんっ』
ここに来るといつもお好み焼きをひっくり返したがる彼女に返しを手渡して作業を促す。こういうのをやりたがる子供っぽくて可愛らしいところが俺は好き。すごく好き。
「角名さんは今もさんのことが好きすか?」
「え、は?」
ザワザワと盛り上がる声と鉄板の音にかき消されて後輩たちからの質問はきっと誰にも聞こえてない。ただ俺だけが酷く動揺している。
「俺らも好きなんで分かります。今は彼氏いるし、兵庫行っちゃったしで言えずにいるっすけど。」
「もう憧れの人って枠で崇めることにしたんすよ俺ら!でも角名さんは違うでしょ。そばにいられるんですから。」
「いや彼氏…いるんでしょ。さっき知ったんだよね。」
「角名さんのほうがかっけえっすから。それに浮気とかまじありえねえ。さんの気持ち考えたことあんのかあの人…。」
後輩にバレるほどダダ漏れてましたかね。
恥ずかしいことこの上ないのですが。