第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
《次は稲荷崎〜稲荷崎〜前の方に続いて押し合わずにお降りください。》
『ふぅ、次だ。』
「大丈夫?」
『全然大丈夫ありがと角名くん』
早くついてくれって思ってた1年の頃とは違う。ちゃんとこんな至近距離でいられるならまじでどこまででも行ける。
改札を通って学校へと歩く道のり、ドタドタと騒がしい足音を無視して進む。
「あ、角名とちゃんや!!おはようさーん!」
『侑くんおはよー!治くんもー!』
「おはようさん、今日も角名と来たんやね」
『うん、お家近いから一緒に来ることにしたんだ』
「へえ、待ち合わせしてるん?」
『うん、私のお家の前で!』
「そんな近いん?やるやん角名!!」
「うっさい侑」
「なんでそんな冷たいんよ〜!なあちゃんからも言ってやぁ、俺にも優しくしてって言うて??」
しょーもな。今に始まったことじゃないでしょ。
『うーん、角名くん』
「はい」
『侑くん可哀想だからもう少し優しくしてあげて?』
「そうする」
ちゃんが言うなら仕方ない。本望じゃないけど優しくしてあげよ。
「うっわ引くわ…」
「なんとでも言って」
『でも角名くんは私が言わなくても優しいから大丈夫だよ侑くん!』
「ちゃん騙されとるで!?角名のスマホのフォルダん中見たことあるか!?見んくてええねんけどな!?人の黒歴史いーっぱい持ってんねん!そんでそれで脅してきたりすんねんで!やな奴やろ!?」
『…そうなの?』
「人のって侑のね。ほぼ侑。8割侑。」
「消せやあ!!!」
「うるさ、北さん呼ぶよ。朝から外で大声出して迷惑な人が部員でいいんですかって。」
「北さん北さんって北さんは警察ちゃうねんぞ!」
「なんや呼んだか侑」
後ろから俺たちを追い越すように歩いていった北さんが振り返って侑を見る。タイミングよすぎて怖。
「…っひ!き、北さんおはようございます!ええ…お日柄も良く!気持ちのええ朝ですね!」
「曇りやけど。帰りは雨降るから気をつけや。」
「は、はい!ありがとうございます!」
折り畳まれてんのかな、くらいの見事なお辞儀を見せる侑。てか今日雨なんだ…傘忘れたな。まあ平気か。