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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第14章 初恋の君と (角名倫太郎)



次の日の朝、俺はちゃんのマンションの前で待っていた。待ち伏せじゃないよ。ちゃんと約束したんだ。

『角名くんおはようっ』

「おはようちゃん」

『ほんとに毎朝一緒に登校してくれるの?』

「うん、だめかな?」

『ううん、私は凄く助かる!…けど角名くんより歩くの遅いからお家出る時間少し早くなっちゃったでしょ…?』

「そんなの全然大丈夫だけど」

たかが5分そこら痛くも痒くもない。ちゃんと居られるなら1時間だって早く起きられるのに。

『角名くんはずーっと優しいね』

「別にそんなことないよ。それに家も近すぎるくらいだし本当に気にしないで。ちゃんが電車で押しつぶされて迷子になる方がしんどい。」

『ふふ、じゃあお言葉に甘えます』

「どうぞどうぞ」

俺ニヤけてないよね?できるだけ平常心装って感情殺してるけど大丈夫だよね?

『今日も電車ぎゅうぎゅうそうだねぇ』

「まあこの時間は仕方ないよね。だから俺から離れないで。」

『はいっ』

ホームに到着した電車は今日も既に混んでるし、ホームに溢れんばかりの人、人、人。学校のある駅で一気に人が降りるから仕方ないんだけど結構キツい。でもちゃんと一緒ならこの時間さえ幸せに変わる。

彼女に俺の腕を掴ませて流されるまま乗車をする。相変わらずの満員電車。ふらっと体勢を崩した彼女が俺とは反対側へ倒れそうになるもんだから慌てて腕を引いた。

「ごめん腕引っ張って」

『ううん、助けてくれてありがと。サラリーマンたちの群れに突っ込むところでした…。』

小さな体を包むように引き寄せてなるべく壁際へと立たせてあげる。俺の心臓の音聞こえんじゃねえかなってくらいバクバクだけど顔だけは平常心…。

「苦しくない?」

『うん、角名くんのおかげで平気だよ』

俺を見上げて ありがとう と微笑む彼女に心臓を撃ち抜かれる。立っていられなくなるのは俺の方かもしれない。
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