第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
家が近づくにつれて人が減っていく。最初は銀と別れて、そのあと双子と別れて、隣にはちゃんだけ。
「家こっちなんだね」
『うん!多分…こっち!』
「え?ほんとに合ってる?大丈夫?」
『今週来たばっかりでまだ全然分からなくて…でも多分こっち!朝もこの公園通った!』
そっか、そうだよね。
それじゃあ…
「なんか心配だし家まで送ってく。」
こういうのも不自然じゃないよね。
『…っありがとう!実はすごく不安だった…』
「住所かなんかわかるやつある?」
『あ、うん待ってね…これ!』
差し出された生徒手帳には相変わらず綺麗な字で自宅の住所が書かれていた。俺もこっちに来てまだ1年ちょっとだし自信は無かったけどこれはなんというか…見覚えのある住所…。
「ねえ、ここさ。隣にグレーぽい建物ない?アパートっていうか。」
『あったかも?』
「だよね。」
なんてこった…隣じゃねえか。
隣のマンションに誰か引っ越して来たんだなあなんて他人事に思ってたのはつい最近の話。
『角名くんはどこらへん?私のこと送ったら遠くならない?』
「遠くなるどころか通り道。ていうかそのグレーのアパートに住んでる。」
『そうなの!じゃあお隣さんだっ』
「なんかあればいつでも。」
『角名くんが近くにいると思ったら急に心強くなっちゃった!』
「それなら良かった」
俺のなんでもない日常は今日からガラリと変わりそうだ。