第1章 好きです先生 (松野千冬)
ワクワク…しねえよ…。
ドキドキするわバカヤロー。
『千冬くん奥で寝る?』
「いや、あなた寝相わるいんで
奥で寝てください…落ちますよ…」
『あははー…よくご存知で…』
なんでも完璧にこなすちゃんの唯一の欠点と言っても過言ではない寝相の悪さ。もう寝返りすごい打つし朝起きたら隣に足があるし…。
「ほんと…何回蹴られたか…」
とか言って好きな人と一緒に寝る時間なんて幸せで幸せで仕方なかったのが本音。
『ごめんってばー!
今日は蹴らないから…ホラ、お隣来て!』
そう言ってベッドの奥に入ったちゃんが布団をピラッとめくってマットレスをポンポンと叩く。
「お邪魔します…」
『よし、寝るぞ!』
┈┈┈┈┈10分経過…。
寝れない。寝られるわけない。
『んー…っ。』
「…っ?ちゃん?」
『…スー…。』
寝てるのか…。
俺なんて全然意識されてねんだな。
こっちは意識しすぎて寝られないどころか
シングルにふたりで寝てるからちゃんの体と上裸の俺の体がぴったりくっついててさっきから半勃ち状態…情けねえ…。
『ん…っ。…くん。グスッ』
え?泣いてる…?
「ちゃん?」
「グスッ…。カくん…っ。ワカくん…。」
「…っ。」
ワカくん…。ほんとにまだ好きなんだ。
寝言であの人の名前を呼びながら泣いているちゃんに胸が締め付けられる。俺なんかじゃ勝てっこない元彼の名前を呼びながら泣いているアナタに俺はどうすればいい…?
「…ちゃん?」
トントンと肩を叩いて見ればビクッと揺れる体。
『ワカ……千冬くん…?』
「…俺ワカくんじゃないよ。」
『…っごめ。あれ…わたし泣いて…。』
「そんなにあの人がいい?
あの人のこと忘れらんないの?」
子供みたいにポロポロ泣くから俺はそっとちゃんを抱きしめた。胸に引き寄せて何度も頭を撫でた。俺のもんになればいいのに。
『千冬くん…っ。わたし…わたしっ。』
「辛いなら無理に話さなくていい。
俺も失恋したから分かるよ…辛いよな。」
今俺の腕の中で泣くあなたの心の中にいるのが俺じゃないことがこんなにも苦しくて辛い。ワカくんなんて忘れてよ…。俺のもんになって…。