第5章 彼女について
男2人組にナンパされ、しつこく絡まれたエマを守るためにリンが街中で喧嘩を始め
たまたま通りかかったオレが相手を殴って止めた事があった
その時のリンのあまりの冷静さに
何とも言えない違和感を感じた
喧嘩した後の気持ちの昂りもなく
受けた痛みさえも
まるで取るに足らないことのような態度を見た時
彼女の隠された性質に初めて気が付いた
垣間見えたリンの中の狂気に微かな寒気を覚えると同時に
彼女の持つ二面性とその危うさに
オレは何故か一層強く惹きつけられたのだった
リンは、幼い自分を見捨て後妻との暮らしを選んだ父親の事をずっと恨んでいた
けれどそれは
求めても得られない愛情を諦め
素直な気持ちを心の奥底にしまい込んでいただけであり
本当の彼女は
父親を深く敬愛していたのだった
その証拠にリンは暁辰会と敵対している組織の連中に街中で絡まれた時
父親を馬鹿にされたことに我慢ができず、相手の頭[カシラ]を殴った
周りにいた相手方の構成員達に取り押さえられ、額に銃を突き付けられても彼女は怯まなかったらしい
車に連れ込まれ、そのまま拉致された彼女は
数時間後
相手の縄張りへ単身乗り込んだセツナによって、危害を加えられる直前に助け出された
その後、父親が相手方の頭と話をつけ
この騒動は無事に収まったのだった