第5章 彼女について
発端の騒ぎが起きたのが渋谷という場所柄
街中で男達に取り囲まれ、車に連れ込まれるリンの姿を、東卍のメンバー達が何人か目撃していたらしい
集会で総長や隊長クラスと親しく話していた彼女のただならぬ事態を受けて、すぐに報告が上がってきた
それと同時に、居なくなったリンを探すセツナからの電話がエマの方にあり、連絡を受けたオレたちは直ちに集まった
集合場所にマイキーの姿は既に無く
代わりにドラケンが指示を出した
車のナンバーや相手の特徴が伝えられ
こまめに連絡を取り合うことを確認した後
オレたちは手分けして都内を探し回った
けれど
彼女を見つけられないまま時間だけが過ぎ
次第に嫌な想像ばかりが頭に浮かんできた
数時間後
エマからの電話でリンの無事が分かった時
オレはちょうど合流したマイキーと一緒に港の倉庫街を回っていた所だった
ホッとして身体の力が抜けたようになっているオレの横で
マイキーはすぐに彼女に電話を掛けた
「…リンに会ってくる…」
「……そうか。じゃ、オレたちはここで解散しよう…」
安心した気持ちで改めてマイキーを見たとき
オレはハッと息をのんだ
その顔色は蒼白で
どこか焦点も定まっていないような様子だった
これまで動揺を周りに悟らせたことのないマイキーのそんな表情を見たのは
後にも先にもこの時だけだった
そして
翌日
マイキーはオレたちに
リンと付き合うことになったと笑顔で報告したのだった