第5章 彼女について
暁 リンの父親は
関東一帯を縄張りとしている組織 " 暁辰会 " の頭[カシラ]・暁 辰彦だった
母親を幼い頃に亡くしたリンは
父親の再婚相手から疎まれ
酷い嫌がらせを受けた
それを知った彼女の父親は
娘にそんな事をした再婚相手を家から追い出すどころか
反対に"娘を守るため"という口実のもと
5歳になったばかりの彼女を組の構成員に預け
自宅から離れたマンションに住まわせた
彼女の護衛兼世話係を任されたセツナという構成員は
以来9年間、リンの親代わりとして共に生活していたそうだ
複雑な家庭環境で14歳まで育ったリンだったが
第一印象はとても温和で優しく、礼儀正しかった
少し控えめな所もあったが
人の話によく笑う
親しみやすい雰囲気を持っていて
素性を知らない人からすると
一見、育ちの良いお嬢様のようにも思えただろう
けれど、彼女には
自分が譲れないと思ったものに対して
頑なに守り通そうとする一面があった
その想いは
純粋であるが故に自身の破滅すらも厭わないほど強く
本能的とも思える彼女の衝動の激しさにはオレも何度も驚かされた
そんな性格のせいで
小学生時代の彼女は問題を起こしてばかりだったそうだ
自分よりも強そうな相手にまで後先を考えず向かっていってしまうリンに手を焼いたセツナは
最低限、自分の身を守れるようにと
護身術と称した戦闘術を教え込んだらしい
それにより、人を殴ることに対して一層ハードルが下がった彼女は
そこらの男共よりもずっと喧嘩慣れしていた