第1章 過去
『見て!こんなに沢山の日傘がある!』
「本当だ、全部綺麗だね。どれにしようか」
私達は今大都会東京に来ていた。
昼間なのもあるだろうが
やっぱり大都会となると
人の量が多い。
兄さんが体が弱いのを知った私は
人通りが少ない方が良い、と言ったが
東京の方が日傘が沢山あって選べると言って
兄さんと東京に来る事になった。
「欲しいのは決まったかい?」
『候補を今2つに絞ってるんだけど
なかなか決められなくて…』
うーん、と悩む私に兄さんが
「それなら2本買おう。
そちらの方が気分によって
日傘を変えられるしね」
と言ってくれた。
『綺麗〜!ありがとう、兄さん!』
「日和が産屋敷家に来た記念だよ
私も日和が喜んでくれて嬉しいよ」
兄さんはニコニコしながら
外の景色を見てそう言った。
初めての日傘に愛着を持ちながら
汽車で帰った。