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ラヴレター─君が遺した日記─

第5章 海へ…


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「御馳走様でした」



僕は店のドアの前に立って、マスターに深々とお辞儀をした



「あぁ、また来な」

「はい」



僕はもう一度軽く頭を下げて、店を出た





タクシーに乗り込んで、行き先を運転手に告げる



「此処から一番近場の海に行って下さい」

「海?ビーチですか?」

「いえ…海の近くまで行ける所なら、何処でも」

「?……はい」



訝しげに首を傾げる運転手を横目で見てから

僕は後部座席に座って

君からの長いラヴレターの、最後のページを開いた











──6月1日──








章くん





ありがとう





大好き。











「……俺も、大好きだよ


ありがとう


智子」


「……はぃ?」



日記に向かって呟いた僕の声に、運転手が振り向いた



「いえ……行って下さい、お願いします」

「……はい」



運転手は首を捻りながら、ナビを弄り始めた











智子


僕が君と共にあったのは

たった一年余りの事だったけれど


僕は君から

一生分の愛を受け取った気がするよ





きっとこの先何年経っても

君と過ごした日々は色褪せることなく

僕の胸を甘く傷め続けるだろう





智子

僕は決して君を忘れない


だって

海は、全ての大陸に繋がっている





君が海になると言うのならば

何処に居ても

君は、僕の傍にいるのだから…





だから智子


…さあ、海へ


僕と一緒に


……海へ、行こう。











あれほど激しく降っていた雨は、勢いを弱めて


梅雨らしいジメジメとした雫が、フロントガラスを濡らしていた





僕は、君の欠片を小瓶の中から取り出して

ギュッと握り締めた





そして


君と僕を乗せたタクシーは


小降りになった雨の中を





ゆっくりと


海に向かって


走り出した








──END──



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