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ラヴレター─君が遺した日記─

第4章 終焉の時


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「……海……か」



僕は、君が綴った5月最後の日記を

何度も何度も読み直した





確かに彼女は、去年の夏の終わりに


「何時か海に行って、お前バカじゃないのって位、日焼けしたい」


なんて言っていた





「……そっか……冗談じゃなかったんだ……」



本当に、海へ行きたかったんだね、智子



(…まあ、バカみたいに日焼けしたいってのは、冗談かもしれないけど)



僕はポケットから、お兄さんから渡された、君の欠片が入った小瓶を取り出した



「……行こうか、智子」



…海へ…








僕はそれから

マスターにタクシーを呼んでもらうように頼んでから

もう

その後の記述は、何も無いだろうと思いつつも


5月最後の日記の、次のページを捲った



「………!!」





其処に


本来なら書かれて居るはずのない日付が刻まれていた





何故なら


その日彼女は


昼過ぎに危篤状態に陥ったからだ





だけど、其処には


確かにその日付が記されていた





夜中に目覚めて、それを書いたのか


もしくは、朝目覚めた時に書いたのか


それは定かでは無かったけれど





存在しないと思っていたその日の日記は


確かに其処に綴られていた





それは


短い短い文だった





いや





文と言うよりは


短い言葉の羅列と言った方が正しいかも知れない





君の遺した


正真正銘の


最後の言葉を汚すまいと





僕は、しゃくり上げながら


懸命にお絞りで涙を拭った



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