第2章 目覚めた先で見た世界
胤晴
「君の話を鵜呑みにする訳では無いが全否定するつもりもない。…だが、言葉通り暫くは置いてやる」
結莉乃
「ありがとうございます…!」
結莉乃は頭を下げるものの、何かを思い出して慌てて顔を上げる
結莉乃
「私、華岡 結莉乃と申します!これから、宜しくお願いします!」
彼女の言葉を最後に、もう話は終わったとばかりに胤晴は凪へ視線を向ける。凪はその視線を受けて、すっと立ち上がり襖を引く
凪
「部屋へ案内します」
結莉乃
「あ、はい!…失礼します」
結莉乃は慌てて立ち上がり胤晴と眞秀に頭を下げてから、既に歩き出している凪の背中を追う
凪
「貴女へ世話役を付けます。その格好では目立ちますからね」
結莉乃
「せ、世話役ですか」
凪
「はい。何か問題でも?」
結莉乃
「あ、いえ。…ありがとうございます」
凪
「いえ、王の命ですから」
胤晴と話している時とは違い少し冷たさが含まれた声色と一切向けられない瞳に結莉乃は、理解していたが自身が招かれていない事を改めて実感する
凪
「此処が貴女の部屋です。…では、私はこれで」
お尻を覆うような綺麗な黒髪を揺らして振り向いた彼を見上げるよりも早く、お辞儀をして流れた紫のメッシュが少し入った前髪を軽く掻き上げ去っていった
遠くなる背中に小さくお礼を述べてから結莉乃は案内された部屋へと脚を踏み入れる。
畳の良い匂いが広がる部屋は、少し値が張る旅館の様な綺麗さだった。
結莉乃
「これから…どうすれば」
力が抜けた様に畳の上へ座り込んだ結莉乃は、はっとして肩に掛けていたお泊まり鞄からスマート端末を取り出す
結莉乃
「まぁ、圏外だよね…。美優、困ってるかなぁ…」
迎えに来てもらう予定だった友人の名を零しながらも現実味が湧かないまま部屋を見る。
ゲームの中に入ってしまう等、それこそゲームやドラマ…画面の中でしか起きない作られたものだと思っていたのに…と、未だ整理出来ていなかった。
結莉乃
(しかも、私が好きなゲームで…推しが…そうだ、推しと喋っちゃった…!)
今になって思い出されるそれに急に身体が熱くなる