第2章 目覚めた先で見た世界
二人が刀を鞘へ戻すと、結莉乃の少し後ろにいる胤晴が口を開く
胤晴
「帰るぞ」
凪
「はい」
眞秀
「じゃ、気を付けろよ?」
胤晴と凪は結莉乃が見えていないかの様に振る舞ったものの、眞秀だけが唯一軽く身体を折ってどこか申し訳なさそうに結莉乃に声を掛け二人に並んだ。
その言葉に結莉乃は保おけている場合では無いと、未だ地面に座ったままで力の入らない身体を何とか動かし正座をする
結莉乃
(何か分からないけど…此処で一人にされたら駄目だ!)
既に結莉乃に背中を向けて去って行こうとしている三人へ視線を向ける。そして、何かが帯りついている様に張り付いて動きづらくなっている喉から何とか声を振り絞りながら額を地面に付ける
結莉乃
「お願いします!私…行く場所が無くて…連れて行って、くれませんかっ?」
額や服が汚れるのも構わずに結莉乃は必死に頭を下げる。眞秀だけが軽く振り向き、その姿に目を丸くし胤晴へ声を掛けようとしたが…それよりも先に彼の低い声が響いた
胤晴
「断る」
結莉乃
「…っ…お願いします!貴方たちに見捨てられたら、どうしたら良いか分からないんです!お願いします…!」
胤晴
「………」
眞秀
「大将…少しくらいなら良いんじゃないすか?」
必死に頼む結莉乃を見ていられなくなった眞秀は控え目に胤晴へ声を掛ける。
すると、胤晴は大きめの息を吐き出し初めて彼女へ長い睫毛で縁取られた切れ長の中で光る紅い瞳を向けた
胤晴
「……住む場所が見付かるまでだぞ」
結莉乃
「…っ…!ありがとうございます!」
眞秀
「良かったな。…ほら、立てるか?」
優しく声を掛けながら近付いた眞秀が手を差し出すと結莉乃は、推しの手である事に緊張と戸惑いを感じつつ恐る恐る手を握ると力強く眞秀は彼女を引き起こす
結莉乃
「わ…っ」
あまりの勢いに思わず眞秀の胸元に身を預けてしまい、慌てて離れ様とするも肩に眞秀の腕が回されて再び触れてしまう
眞秀
「離れる必要は無い。ゆっくり歩け」
結莉乃
「は、はい…ありがとう、ございます…」
腰が抜けていた結莉乃を案じての行動が彼女の心臓を痛いくらいに早くさせる