第2章 目覚めた先で見た世界
結莉乃
(殺される…!)
唐突に訪れた生を終える瞬間を、腕で顔を覆うようにして待つ事しか出来なかった。
だが─…
「ったく、おっかないなぁ。囲まれてんのに呑気に刃物触るなんて」
この場に不釣り合いな余裕と頼もしさを感じる声と同時に、きんっと響く高い音に結莉乃は恐る恐る顔を上げ…彼女を庇う様にして立つ背中に、結莉乃は目を丸くする
結莉乃
「え!眞秀くん!?」
眞秀
「おお!?何で俺の名前知ってんだ!」
彼女へ背中を向けていた彼が顔だけ軽く振り返り、名乗ってもいないのに自身の名前を知っていた結莉乃を見るが…全く見覚えが無い。
結莉乃は結莉乃でこんな状況にも関わらず、目の前の彼の登場で混乱していた。
結莉乃
(え?何で眞秀くんがいるの?夢?もしかして、私はまだ寝てるの?いやでも、さっき痛かったし…)
疑問符ばかり浮かぶ頭は簡単に理解する事は出来なくて。
だが、次に聞こえてきた声は更に彼女を混乱へ陥れる
「俺の領で悪さをしようとは良い度胸だ」
結莉乃
「え…?」
「鬼の花嫁」には名前の通り鬼が存在し、先程声を上げたのは鬼の領を治める王である嶺渡 胤晴(ネワタシ ツグハル)だ。
結莉乃
(何が起こってるの…?)
理解出来ずに保おけている彼女を放って事は進んでいく。
「眞秀、さっさと終わらせますよ」
眞秀
「嗚呼、分かっている」
冷静な声がして保おけながらも結莉乃がそこへ顔を向けると、胤晴の側近である桐生 凪(キリュウ ナギ)がいつの間にか結莉乃を庇っている眞秀の隣に立っていた。
男
「へっ、鬼王様が登場とはねぇ」
凪
「その下品な目を王へ向けないで下さい」
男
「何を…!」
悔しげな男の言葉を最後に眞秀と凪が地を蹴り、一切男達が振る刃を受ける事無く…適わないと理解した男達は転びそうになりながら去っていった。
結莉乃は腰を抜かしたまま目の前で繰り広げられた戦いと画面の中にしか存在しない人物達を見ている事しか出来なかった