第5章 近付いた距離から変化は訪れる
だが、必死に食らいついてくる姿は逞しくて…綺麗だと天音は思った。天音の知っている女性像と全く異なる目の前の結莉乃が、特別に感じてしまった。
異形に彼女が立ち向かうというのであれば、自分がちゃんと教えなきゃ結莉乃は此処へ戻って来れなくなるのかもしれない…なんて考えを持つと、天音はそれは何か嫌かもしれないと思った
天音
「良く聞け」
結莉乃
「あ、はい!」
天音
「アンタは非力だし小さい」
結莉乃
「…はい」
天音
「小さいなら、それを利用すンだ」
結莉乃
「利用?」
天音
「脚元を狙え」
結莉乃
「脚元……視界外の攻撃には弱いからって事ですか?」
天音
「嗚呼」
ちゃんと教えてくれる天音に対して、いつの間にか結莉乃からは彼への恐怖心が無くなっていた。
それから天音に色々と教えてもらい、結莉乃は前よりも少しだけ力がついたような気がして達成感の様なものを感じられた
結莉乃
「今日はありがとうございました!また教えてください!」
天音
「……」
結莉乃
「あの?」
天音
「敬語…使うンじゃねェ」
突然の言葉に結莉乃は一瞬きょとんとしてしまったが理解して、ぱぁっと笑顔を見せる
結莉乃
「分かった!ありがとう…!」
天音
「……っ…」
昔から目付きのせいもあり怯えられる事が多かった天音は、見せられた笑顔に固まった。だが、慌てて視線を逸らすと大股で道場から出ていってしまった。置き去りにされた結莉乃は、ぼーっと天音が出ていった所を見ていた