第2章 目覚めた先で見た世界
眞秀
「名乗る必要ないかもしれねぇが、一応名乗らせてくれ。俺は藤 眞秀(フジ マホロ)だ。分からない事ばかりで不安だろうが、何かあったら俺を頼れ。な?」
未だに目の前に推しが居る事に改めて不思議な感覚になるものの、彼からの暖かい言葉に気が付いたら頷いていた。
その結莉乃の姿を見て安心した様に目を細めた眞秀の大きな手が彼女の頭に優しく乗せられた。
結莉乃
(眞秀くんの手は…こんなに暖かいんだ…)
眞秀
「て事で、敬語も必要無いからな。気楽に話してくれ。…宜しくな、結莉乃」
結莉乃
(え、待って。え?推しが…推しが私の名前を呼んだ!贅沢過ぎない?いや、その前に気絶しそう!)
眞秀
「結莉乃?」
突然、固まってしまった結莉乃を不思議に思い眞秀は彼女の顔を覗き込む。だが、その行為が彼女に追い打ちをかけ思わず顔を背け隔てる様にして両手を振った。
結莉乃
「わーやめて!ちょっと名前呼ばないでもらえます!?」
眞秀
「名前、呼ばなきゃ誰に話し掛けてるか分かんねぇだろ」
結莉乃
「や、いや…そうなんだけど…今二人しかいないし…。それに、心臓に悪くて…」
眞秀
「はぁ?」
彼女から述べられる言葉に意味が分からないとでもいうような声を出す。が、何やらそのやり取りが面白かったらしく眞秀は、ふっと笑いを吹き出していた
結莉乃
「な、何で笑うの?」
眞秀
「いや、それが本来の結莉乃なんだろうなって思って。大分、落ち着いたか?」
結莉乃
「え?…ぁ……うん、ありがとう」
眞秀
「どういたしまして」
どこまでも暖かい彼の言葉に結莉乃は目を細め、ふと庭へと視線を向けると一本の木が立っていた
結莉乃
「あれは…何の木?」
眞秀
「ん?…あぁ、あれは桜だ」
あの桜が咲く姿を見られるのか、その頃には現実世界に帰れているのか…それよりも、どうしたら帰れるのか…とどこか矛盾する思いを結莉乃は抱いていた