第11章 二度目の新婚旅行、の巻
暫くして彼が部屋を出て行く音がして、部屋がしんと静まりかえる
出ようかどうしようかと迷っていると、クローゼットの扉が開いた
「アリス、大丈夫?!」
「ダイジョブ、デス…アニハ、ナグリマセン、ワタシ、ハ」
涙を拭いながらそう言うアリスには、確かに暴行された様な痕跡は見当たらない
ただ、部屋の中は眼を覆いたくなる様な荒らされようだった
「…マダ、ノコッテル、オモイマス」
アリスが腕を引きちぎられたテディーベアを抱き上げて言った
「アニハ、ワタシニハ、ナグラナイ…ダカラ…」
「…アリス」
僕は震える小さな体を抱きしめた
「そうだね、お兄さんはまだきっと何処かで正気を保ってるんだ…
可愛い妹の君に手を上げられないのが何よりの証拠だね」
「…アリガト、ゴザイマス」
遠慮がちに僕を抱き返すアリス
(やっぱりこのままオメオメトと自分だけ逃げるなんてコト出来ないよ)
「…ねぇ、アリス…僕に何か出来る事は無いかな?」
「Why?」
「何故って?…だって…」
その時、再び部屋のドアが開いた
「やっぱり、ココに居たのかい?僕の可愛い仔鳩」
「!!!!」
「Michel!!」
彼が怖いくらいの笑顔で其処に立っていた