第11章 二度目の新婚旅行、の巻
「アニガ、カエッテキタ…ヨル、サガシテタ、ズット、イナカッタ…ソト、サトシノコト、サガシテタ」
「お兄さんは昨夜僕を探して外に出てたんだね?
…で、今帰って来た…」
ビクビクと震えながら頷くアリス
「クローゼット、ナカ!」
「クローゼットの中に隠れればイイの?」
「ハイ」
僕をクローゼットの中に押し込むと、アリスは服を被せて僕を隠した
「コエ、ダス、ダメ」
「解った…声は絶対出さないよ」
「…ナニヲ、アッテモ、ゼッタイ、ダメ…ゼッタイ、コエ、ダメ」
「…解ったけど…」
どうしてそんなに怯えているのか
どうしてそんなに念を押すのか
それを問う前に、アリスが怯えた様子のままクローゼットの扉を閉めた
それと同時にドアが激しくノックされる
ダンダンダンッ
「Aliceーーーっ!!!」
「Y…Yes」
ドアを開ける音と一緒に、彼が部屋に傾れ込んで来たのが解った
…何故、アリスがそんなに迄念を押して「声を出すな」と言ったのか
その訳はすぐに解った
彼女の兄が部屋に乱入した後
部屋には、耳を塞ぎたくなる様な罵声と、アリスの悲鳴…
そして何かを殴りつける様な鈍い音が響き続けた
僕は今にも叫び出したいのを必死に堪えて、暴君が去りゆくまで歯を食いしばってじっと耐えていた