第11章 二度目の新婚旅行、の巻
俺は智くんに届く様にと、祈る様な想いで君も見ているかもしれない空に向かって呟いた
「…智くん…智くん聞こえる?
…きっと行くから…俺を信じて待ってて…そしてきっと……いや、絶対に……
………無事で居てね」
祈る想いを乗せて、白い息が上空に向かって舞い上がり、消えて行った
それを見届けて、窓を閉める
目覚ましのコーヒーを入れようと寝室を出てキッチンに向かう途中
リビングのテーブルの上に置かれた絵本が眼に入る
脳裏に、それを胸にしっかりと抱きしめて、嬉しそうに微笑む智くんの顔が浮かんで消える
「……」
ずっしりと重いそれを手に取って、智くんがしたように抱きしめる
「…智くん」
気が付いたら、涙が溢れて頬を濡らしていた
「智………さとしぃーーっ!!!」
一度堰を切った涙は止まる事を知らず
それは慟哭となって
俺は人生でこんな泣いたコト無いってくらいに、声が枯れ果てるまで泣いた