第11章 二度目の新婚旅行、の巻
「…結局一睡も出来なかった」
誰も居ない寝室のベッドに腰掛けて、白みかけた空を見ながら一人ボソッと呟く
大使館を出た後、俺は必死で智くんを探して回った
酔っぱらいに絡まれても、警察官に職務質問されても、ゲイのお兄ちゃんにナンパされても
俺は夜通し智くんを探し続けた
…でも、とうとう智くんを見つける事は出来なかった
仕方なく始発の電車で亀の家に戻った俺だったが
もしかして帰って居るかもと言う淡い期待も虚しく、其処には愛しい智くんの姿は無かった
で、少し仮眠を…と思ってベッドに入ったものの
一向に眠れずに、ロンドンの遅い朝が明けてしまった
言葉も通じない異国の地で、どれだけ心細い思いをしているだろう
いや、それよりも悪いヤツに捕まって、酷い目に遭っているのでは
そんな事ばかりが頭を過って、眠れる訳なんかなかった
「…智くん…待っててね…必ず俺が見つけてあげるから…」
(しかし、アレだな…智くんって受難体質なのかな?)
俺も大概受難体質だけど、智くんの場合は受難のスケールが桁違いな気がする
(そう言えば昔読んだギリシャ神話の美の女神って、えらい嫉妬深い女神様だったような…
…自分より綺麗な人間が許せないとかなんとか…)
「…智くん、あんまり綺麗すぎて女神様の怒りを買ったのかな?」
薄暗い部屋の窓を開けると、冷たい空気が部屋に傾れ込んできた
ふぅっと息と付くと、白い煙が上がった